とにかく「相手に合わせる」が正解! 行動心理学的で考える会話のコツ

人のしぐさや態度、行動など、目に見える客観的な事実を通して人間心理の謎を探究するのが「行動心理学」という学問。認知行動科学を軸として人材開発、コーチング、マーケティング等の研究とコンサル研修に取り組んでいる匠 英一氏は、行動心理学がわかると他者の態度の裏にある理由や意味がわかると言います。

“相手に寄りそう姿勢” が距離を縮める突破口

初対面の相手でもポンポンと会話のキャッチボールができる人がいる一方で、世間話にも四苦八苦するタイプもいる。

もし自分が話し下手だと思うようなら、無理に話そうとせず、聞く側に徹し、さらに「ミラーリング」をつけ加えるといい。

ミラーリングとは相手のしぐさや言葉などを真似することで、これには好感度や親近感をアップさせる心理効果がある。

たとえば、相手がペンを持ったら自分もペンを持つ。相手が机に前かがみになったら自分も前かがみになる。「最近眠れないんですよね」と言われたら、「最近眠れないんですか」とオウム返しをしてみる。 

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じつは、好感を持たれやすい人はこれを無意識でやっていることが多い。同じような言動をとることは共感力にもつながり、自然と距離が縮まるのだ。

とくに表情を真似することは効果的だ。相手が笑顔で話しているときは笑顔で聞き、真剣な表情で話しているときは真剣に聞く。

もちろん、相手のタイミングにぴったり合わせるのは不自然なので、少し遅れて真似するなど不自然にならない気遣いは必要だ。

外から見えない“オーバーリアクション”の心理効果

誰かが面白い話をすると、お笑い芸人のごとく手を叩いて笑う人がいる。喜怒哀楽の薄い人ならそのオーバーリアクションに思わず引いてしまうところだが、じつはこの行為はコミュニケーション術という点ではそれなりに効果がある。

心理学の世界では、人間の行動と感情の結びつきについてさまざまな説があるが、面白 い話のときに手を叩いて盛り上げるという行為は、「情動二要因説」に当てはめて考えられる。 

ここでいう「二要因」とは、「生理的な反応」とそれに対する「認知」の相互作用のことだ。

人は大げさではなくとも、面白かったり楽しかったりすると自然と手を叩くものだ。そしてその行動を認知することで、さらに楽しい気分になれる。

これを踏まえれば、つまらない人の話でも大げさに手を叩いて笑って盛り上げれば、そ の場の雰囲気をよくすることは可能だ。

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もっとも、敏感な相手にはその狙いは一発で見抜かれてしまう恐れもある。くれぐれも お笑い芸人のリアクションは参考にせず、自然な流れで試してみることをおすすめする。

「共通点」を見つけて相手との距離を詰める方法

「類は友を呼ぶ」という言葉があるが、たしかに自分の人間関係を思い返してみると、何らかの共通点でつながっている人が集まっていたりはしないだろうか。

趣味、出身地、性格など、その内容は問わずとも、きっとどこかで相通ずるものがある はずだ。

「これは「類似性の原理」といって、人は自分と共通点のある人に親近感を抱くという心 理によるものだ。

これを利用すれば、なんとなく噛み合わない相手とも簡単に距離を詰めることができる。無理矢理にでも相手との共通点を探して、アピールするだけでいいのだ。

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一番いいのは趣味やペットの話など、相手の周辺情報を探ってみることだが、ビジネス上のつき合いだとプライベートを根掘り葉掘り聞くのはむずかしい。

それなら、ランチで相手が頼んだものについて「それ、好物なんですか? 自分も好きなんですよ!」と言って話を広げてみるだけでもいい。

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こんな些細なことでも「えっ、 あなたもですか?」と親近感を抱いてくれて、お互いの距離が縮まるはずだ。

 

PROFILE
匠 英一

1和歌山市生まれ。東京大学大学院教育学研究科を経て東京大学医学部研究生修了。学生時代から学びの楽しさをコンセプトにした塾経営、東進スクール研究所の顧問やデジタル教材の監修・企画をし、90年に日本初の認知科学専門のコンサル会社(株)認知科学研究所を創設。心と行動・脳を統合する「認知行動科学」を軸として、人材開発、コーチング、マーケティング等の研究とコンサル研修に取り組んでいる。経営心理コンサルタントとして大手メーカーのコンサルや業界団体(15件)を自ら企画創設するなど実績多数。現在はデジタルハリウッド大学教授、学び&遊びを育てる会代表、また日本ビジネス心理学会副会長としてビジネス心理検定の資格普及に取り組んでいる。『ビジネス心理学』(経団連出版)、『男心・女心の本音がわかる 恋愛心理学』(ナツメ社)、『1日1分! 目からウロコの勉強法』(青春出版社)ほか著書多数。“しぐさ分析の専門家"としてTV出演も数多い。