“いい人”ほどつけ込まれる! スゴ腕セールスパーソンのトーク術

人のしぐさや態度、行動など、目に見える客観的な事実を通して人間心理の謎を探究するのが「行動心理学」という学問。認知行動科学を軸として人材開発、コーチング、マーケティング等の研究とコンサル研修に取り組んでいる匠 英一氏は、行動心理学がわかると他者の態度の裏にある理由や意味がわかると言います。

【一貫性の原理】“ブレない自分” でいたい心理がつけ込まれる

家電量販店で掃除機を眺めているときに店員に話しかけられたとする。「その掃除機、カッコいいですよね」「ひと昔前のものより、はるかに機能が充実していると思いませんか」

店員から投げかけられたこうした問いかけすべてに肯定的な相槌を打つようなら、あな たはもう購入の一歩手前まできている。

そのときにはすでに「一貫性の原理」の心理が働いているからだ。一貫性の原理とは、一度肯定的な態度を示したら、それを貫きたいと思う人間心理のことである。

この原理が働いて肯定的な返事を連発したあと、店員から「もう在庫もわずかなので、ぜひいかがですか?」と畳み込まれると、これにもつい「そうですね」と答えてしまう。 そうすることで、自分の中ではブレない態度を貫けるからだ。

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人は一度表明した態度を変えることに抵抗を覚える。その意識が利用されるのだ

見方を変えれば、ガードの固い相手を崩したいときなどにこの心理作用を応用できる。

まず、相手がイエスと答えるような会話をして、一貫性の原理を引き出す。それから、 満を持して本題を持ちかければ、最終的に「イエス」を引き出すことができるかもしれない。

【両面提示の法則】デメリットも伝えられると信用が高まる

今年の夏は晴れの日が少なかったため、果肉の甘みは弱いです」「先月の台風の影響で価格が高騰しています。ほかの野菜もご検討ください」

スーパーの売り場で最近たまに見かけるのが、商品に添えられているこのようなカード だ。

店によって呼び名は違うだろうが、本来は売りたいであろうその商品のデメリットを、あえて堂々と掲示する。

買い物客にとっては、 ありがたいアドバイスである。おそらく、このカードを見て不愉快な気分になる客はいないはずだ。

むしろ、「なんて正直で消費者思いの店なんだ」と感激し、よりいっそう店への信頼を深めるに違いない。

これは、いい面だけでなく悪い面も同時に伝える「両面提示の法則」をうまく活用した例だ。

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メリットだけでなくデメリットも伝えると信頼を得られる

人は心のどこかで「うまい話には落とし穴がある」と無意識に警戒している。だから、メリットを並べ立てられるだけでなく、デメリットも同時に伝えられたほうが安心するのだ。

もちろん、その安心が好感度につながるのはいうまでもない。

 

PROFILE
匠 英一

1和歌山市生まれ。東京大学大学院教育学研究科を経て東京大学医学部研究生修了。学生時代から学びの楽しさをコンセプトにした塾経営、東進スクール研究所の顧問やデジタル教材の監修・企画をし、90年に日本初の認知科学専門のコンサル会社(株)認知科学研究所を創設。心と行動・脳を統合する「認知行動科学」を軸として、人材開発、コーチング、マーケティング等の研究とコンサル研修に取り組んでいる。経営心理コンサルタントとして大手メーカーのコンサルや業界団体(15件)を自ら企画創設するなど実績多数。現在はデジタルハリウッド大学教授、学び&遊びを育てる会代表、また日本ビジネス心理学会副会長としてビジネス心理検定の資格普及に取り組んでいる。『ビジネス心理学』(経団連出版)、『男心・女心の本音がわかる 恋愛心理学』(ナツメ社)、『1日1分! 目からウロコの勉強法』(青春出版社)ほか著書多数。“しぐさ分析の専門家"としてTV出演も数多い。